歌手の安藤裕子が7月17日に更新したブログで、今の音楽業界の危機、音楽や映像のあり方を「牙の行方」というタイトルのもとで心境を綴った。本人のホームページ(www.ando-yuko.com)には、いつも多くの手紙が寄せられているが、この日記には、大きな反響があり、多くのファンから感想が寄せられている。

 以下、全文。

「牙の行方」

昨晩仕事も終わり、スタッフみんなとご飯を食べていた。
我々は今の音楽業界の滅びゆく様を、どう変えてゆけるかを話し合っていたの。
一部のミュージシャンは勇気を出して
「CD買ってくれよ」
と声を大きく唱えているという。
当たり前だよね。
今世紀の音楽家達はパトロンなんかにゃ雇われてなくて、
レコードやCDというフォーマットの商品を
心の通じる相手に売り渡して生きてきたんだ。
この業界に携わる人間も、その音楽という畑を耕し、
出荷、販売を手伝うことを生業に生きてきたんだ。
今は私たちが野菜を販売する店先で、野菜を配ってる奴がいる。
そりゃお金払って野菜買う人間もいないだろ。
ユーザーを責められないよ。
野菜を買え!CDを買え!とも言えないよ。
私だって野菜大好きだもん。
目の前で美味しそうな野菜配られたら嬉しくて持って帰るもん。
ただ問題なのは、
今、道で配られてる野菜が我々の畑から搾取され、
しかも培養されて増えたものに過ぎないと言うことだ。
大本の音楽が消えれば世界から音楽は消える。
そりゃ音楽だもの、ミュージシャンが消えたって、業界が消えたって、
草木が芽生えるみたいに暮らしの中に再び誕生するだろう。
音楽は人間の生活の営みだ。文化だ。
でも今世紀の音楽は瀕死だ。
そこにはあるんだよ。
死ぬほど生まれてるんだ。美しいものは沢山あるんだ。
でも金の匂いに、一部の人間が我々の村に押し入って
「我々が新しい流通制度をご紹介しましょう。」
なんてうまいこと言って収入の全てを奪っていった。
今変えなきゃいけないのは法整備だろう。
CDというフォーマットがユーザーに必要とされなくなったという事は
もはや仕方の無いことだ。
電気メーカーのハード作りの歴史の中で、
徐々に音楽制作者への著作権を軽視する動きがあった事が全ての悪なのかい?
いや、もっと根本的な要因が沢山あったかもしれないよ。
ねえ、誰かが村人の仮面を被ってこの世界から搾取を始めたんだ。
もうすぐ私たちの畑は与える水もなくなって死に途絶えるだろう。
音楽を愛してくれた人々にサヨウナラを告げる前に。
私はあんたに牙を剥く。
さあ、あんたは誰なんだ?