<写真>母の命日に歌を捧げる川嶋あい(2009年8月20日)

母の命日・8月20日に念願の渋公でライブを行った川嶋あい

<ライブレポート:東京・渋谷C.C.Lemonホール>
 この日は全ての曲に優しく包み込まれたような感覚だった。念願だった渋谷公会堂でのライブを実現したのは、歌手の夢を支えてくれた母親が他界した翌年の命日。あれから七年。同日同場所に立った彼女の目には悲観とは違う感謝という暖かさに満ちた美しい涙が光っていた。

 川嶋あいにとってデビュー七年目の夏であり母親と別れた夏。毎年同時期にツアーを行い、最終日は決まってこの日=8月20日だった。この年も同様でありファンもまた共通認識として捉えていた。観客席前列には母の遺影が置かれ、ファンと共に川嶋のライブを鑑賞した。

 彼女の原点・ストリートを彷彿させる壇上セットに登場した川嶋は電子ピアノを弾き語る彼女本来の形式でスタートさせた。「ガラスの心」「lover」「リマインダー」を彼女の特徴でもある耳元を撫でるような歌声でやさしく歌いあげる。夜更けに見るスローペースな幕開けは彼女自身の軌跡を振り替えっているようにも見えた。観客もまた歌声を還して川嶋の時間を共有しているようだった。

 バンドメンバーの登場で昼夜は逆転する。明るい朝日が差し込む部屋で無邪気に走り回る子供のようにポップなナンバーが会場を駆け巡った。川嶋は「皆さんようこそ!」と短く挨拶。リズミ立つ陽気な彼女もまた魅力的だ。手拍子で応えるファンに後押しされる形で「Again」「大丈夫だよ」を熱唱。「私自身の応援ソングで皆を抱きしめてあげたい」と披露した「見えない翼」で会場は最高潮に達した。

 言葉のコミュニケーションも忘れていない。7曲目の「Revolution」では、オーディエンス個別にサビのフレーズ「♪世界で一番頑張っている不器用なあなたが好き」を歌わせる場面も。オーディエンスとの距離がぐっと縮まったコール&レスポンスに続いて、次曲「見えない翼」で更に高揚を高めた。

 9曲目からは雰囲気が一転する。スタンディングスタイルから座っての歌唱に切り替え、会場の雰囲気を落ち着かせると、最新アルバムの収録曲とヒット曲を織り交ぜあいながら彼女の独特の空間へと誘導する。「Power of smile」「青い鳥」「ドアクロール」「涙」を歌い上げ、13曲目「天使たちのメロディー」で更に深化する。川嶋のボーカルセンスが際立つバラードで空間をコントロールすると「やわらかな日差し」でオーディエンスを優しく包み込んだ。

 ライブ後半は最新アルバム収録曲「ネオスティ」でスタート。アグレッシブな歌唱とトークで会場を盛り立てた。「ここで残念がお知らせがあります。恋人にしたいランキングで初めてランク外となりました…。(悔しくて)梅酒をはじめて飲んだ…。次は結婚したいランキングを狙うぞ」と関西訛りのユニークさで和ませると、リクエストコーナーへ移行。このコーナーではファンからのリクエストに応えて曲を歌う、というものだが、コーナー自体、公演各地で行ってきただけにネタばれ必死。というよりもネタばれ状態。それでも川嶋は、持ち前の演技力でうまく誘導?するとリクエストの多かった?大ヒット曲「明日への扉」を披露した。

 ここからラスト曲に向けて攻勢に出る。「真夏最後の夜だと思って!盛り上がっていますか!この会場をぶっ壊しますか!」とオーディエンスと共に小刻みにジャンプ。アップテンポに更に激しさを増し「My Love」を披露。優しくも強く、音を楽しむのに不自由することのない弾みを利かせた音たちが次から次へと送り出され「Merry-go-round」で再び頂点に達するとクライマックスへ向かう。最後は「もっと!」を熱唱し幕を降ろした。

 まだ余韻に浸る気がないオーディエンスはアンコールを打ち立て、川嶋の再登板を促す。川嶋本人も同様の気持ちを抱いているかのように、高らかに鳴ったアンコールに応える。再び登場した川嶋は晴れやかな表情で「この道ふらふら」を熱唱。アンコールもまた音とのセッションを楽しみオーディエンスとの触れ合いを大切にした。

 この日は川嶋にとって最愛なる母親の命日でありツアーファイナル。アンコール2曲目から状況が変わり、川嶋は愛と感謝を持って送る究極のバラード「カケラ」を披露。遠くに響き聞かせる様に高らかに鳴る高音は品性良く、会場に暖かさと温もりを与え心情に入り込み、母と戯れている様にも見えた。

 歌い終えステージを後にする川嶋を2度目のアンコールが追い掛ける。川嶋も特別な日に対する思い入れが強く、異例の2度目のアンコールに応えた。「母は私が16歳の時に亡くなった。歌うことを教えてくれたのは母でした」と涙ながら最期に感謝の歌を届けた。この日一番の歌声は水面に触れる繊細な指先の如く、オーディエンス、関係者の心を優しく撫でた。彼女の温もりに触れた会場からはすすり泣く声が静かに余韻として残った。(文責・喜村陽仁)

<セットリスト>
01.ガラスの心
02.lover
03.リマインダー
04.Escape
05.Again
06.大丈夫だよ 07.Revolution
08.見えない翼
09.Power of smile
10.青い鳥
11.ドアクロール
12.涙
13.天使たちのメロディー
14.やわらかな日差し
15.オネスティ
16.明日への扉
17.My Love
18.Merr1y-go-round
19.もっと
EN1.この道ふらふら
EN2.カケラ
EN3.-